中国・寧夏の賀蘭山東麓は、近年、ワインの名醸地として世界からの注目を集め、「中国のボルドー」「中央アジアのナパ・ヴァレー」とも称されている。荒れ果てた砂漠だった大地に命を吹き込み、実り豊かなブドウ農園に変える。その偉業の陰には、一人の男の数十年にわたる努力とCat®マシンの活躍があった。
中国のほぼ真ん中、黄河の上流に位置する寧夏。賀蘭山の東麓に広がる平原は、年間3,000時間にも及ぶ豊富な日照量、昼夜の大きな寒暖差、通気性の良い土壌と、ワイン醸造用ブドウの栽培に絶好の条件を備えた黄金地帯。しかし、長い歳月をかけて形成された沖扇状地の地形には、無数の砂礫と共に巨大な岩が混在し、ブドウ農園づくりの障害となっていた。
寧夏ワイン産業のパイオニアの一人である馬彦峰氏は、地道な努力によって荒れ地を変え、ブドウ栽培の工業化を成し遂げ、この地から理想のワインを世に送り出すという夢をかなえた。その夢の実現を支えたのが、中国⻄部地域を担当するCatディーラーECI-Metro社だった。
開墾の序盤は困難を極めた。広大な土地を覆う無数の石をスコップで丹念に取り除く日々が続いた。そのため作業員の手にはスリ傷が絶えなかった。人力では歯が立たない硬い石も多かったため、馬氏は「土は残して硬い石だけを撤去する方法はないか」という相談をECI-Metro社に持ち掛けた。
ECI-Metro社は、その解答としてCat 336Dをはじめとする10台の中・大型マシンを提供。さらにサービスチームが現場へのヒアリングを重ね、テストを繰り返して、最終的に20t以上の油圧ショベルにはふるい作業用のスケルトンケットを取り付けるという解決策を導き出した。バケットをカスタマイズした油圧ショベルが掘り起こし、ふるいにかけた硬い石を、ホイールローダや中型油圧ショベルで転がしながら運び出す。想像を絶する過酷な作業の積み重ねの末に、荒涼としていた土地はブドウ栽培に適した農地に生まれ変わった。
小粒の砂利を豊富に含む沖積土は、ブドウの根が張りやすく、深く伸びるのに役立つ。水はけが良く、豊富なミネラルを含んでおり、良質なブドウを育てることができる。また、昼夜の寒暖差が激しい砂漠気候は、糖度の高い果実を実らせてくれる。しかし、冬季には夜間の気温が-20℃まで下がることもあり、ブドウの木を凍死から守るために土の中へ埋めなければならなかった。
年が明け、春の彼岸を迎える頃、ミニ油圧ショベルがブドウ棚の間を行き来する姿が見られたら、掘り起こし作業が始まった合図。Cat 303.5E、305.5E、305.5E2が覆土を取り除くと、埋もれていたブドウの木が姿を現す。
手塩にかけて育てられ、豊かに実った果実は、ワイナリーに送られて破砕・発酵・圧搾などの工程を経た後、樽詰めにされる。樽の中で時間をたっぷりかけて熟成された寧夏ワインは芳醇な香りと深くまろやかな味わいを持つ。フランスやカリフォルニアと同じ緯度に位置する寧夏は、世界で最も素晴らしいワインを生産するニューワールドとして今やワイン愛好家に認められている。
馬氏は、娘も「ぶどう」と名付けた。「この子も、この土地も、私にとってかけがえのない宝物です。この愛すべき土地で、私はこれからもすべてを捧げて高品質のブドウを栽培し、美味しいワインをつくるために努力を注ぎ続けます」